■ 二人のノーベル賞学者とのエピソード 2 ストリーミングビデオ 二人のノーベル賞学者とのエピソード 2 こうして先生は見事に3年間学群長のお仕事をなされ、いろいろな高い評価の実績をあげられました。 メリトクラシーを重視される江崎さんにとっては、このような功績のあった白川さんに第三学群長の終了後にどのように処遇すべきか 重要な問題だったのではないかと思います。ちょうどその当時、筑波大学の図書館長の人選がすすめられておりまして、 江崎さんとしては、白川さんが最適任者ではないかということで先生のご意向を伺うことになりました。 たまたま江崎さんは公用で長期のアメリカ出張がございまして、すぐ出発しなくてはならないという事情がありましたので、 白川さんにご意向を伺う役割は私のほうに回ってまいりました。私は自信を持っていたのですね。 というのは、図書館長というのは国立大学にあっては、学長に次ぐぐらい非常に名誉の高い、みなさんが羨む地位なのです。 ですから当時筑波大学図書館は電子化を進めておりましたので、コンピューターにも造詣の深い白川さんにとっては 大変魅力のあるポジションではないかと私自身も考えました。そこで私は簡単に江崎さんにお約束しました。 江崎さんの御留守中に必ずご同意を得てまいりますのでご安心ください、と申し上げたんでございます。 ところが、江崎さんのお留守中に、白川さんのところに参りましたところ、今度ばかりは勘弁してください、と強く辞退なされました。 2度も3度も私は伺いしましたけれども、頑固として御受けていただけなかったのですね。 お断りの時には、白川さんは笑顔を絶やさずにやわらかい物腰でお話されるので、なんとなくスキがありそうな気がするのですけど、 やはりそこの中には、一歩も退かないという芯の強さと揺らぎない信念というものが感じ取られました。 私はお手上げだということで、アメリカのニューヨークにいらした江崎さんにお電話を致しました。 江崎さんのほうから直接口説いてくださいとお願い致しました。江崎さんはさっそく国際電話で白川さんのご自宅のほうにお電話されたそうですが、 やはり駄目だったよ、という返事を翌日お電話で頂きました。 私は、誰でも受け入れそうな魅力のある地位についてのお誘いを断られたということで、度を重ねるごとに私としては尊敬の念が ますます深まったというようなところがございます。 こういうところで、白川さんと江崎さんのそれぞれの特徴というものがお分かりいただければ幸いだと思います。 BACK ▲ 二人のノーベル賞学者とのエピソード 1 NEXT ▼ 科学するこころ