高エネルギー加速器研究機構 一般公開
9月1日、高エネルギー加速器研究機構にて一般公開が行われました。
高エネルギー加速器研究機構では、加速器と呼ばれる装置を用いた研究が行われています。
物質を分子 → 原子 → 原子核 → 陽子・中性子 → ・・・と小さく小さく分けていくと、一体何から出来ているのだろうか?について調べることで、宇宙が誕生した時の謎や物質の起源を追いかける研究に取り組んでいます。また、中性子や特殊な光、ミューオンなどの粒子を用いることで、たんぱく質などの構造を調べる研究も行われています。 今回の公開では、研究の成果や、研究を支えている技術の紹介、子供達のための科学コーナー、講演会など、豊富な内容で多くの来場者を集めました。
Bファクトリー
BELLE測定器
加速器
電子と陽電子が、長さ3kmにも及ぶ2つのリングの中をそれぞれ逆方向に回っています。
この電子と陽電子を衝突させて、B中間子・反B中間子ペアを大量に発生させています。
BELLE測定器(写真)で、発生したそれらの粒子の検出を行ってます。粒子の運動量やエネルギーを求め、粒子の種類を同定することがこの検出器の役割です。
この実験は、「あらゆる物質には反物質があるはずなのに、我々が住む宇宙には、物質ばかりが発見され、反物質がほとんど観測されないのは一体何故なのか?」という疑問からスタートしています。B中間子と反B中間子の性質の差を調べることが、その謎を解明する近道だと考えられています。当日は、このリングに沿って歩くことが出来ました。
ニュートリノ振動実験前置検出器
加速器で作った人工のニュートリノを岐阜県神岡町にある観測装置「スーパーカミオカンデ」に向けて発射します。その発射前にニュートリノの成分の測定などを行っているのが、この前置検出器です。この実験自体は、K2K長基線ニュートリノ振動実験という名称で呼ばれています。K2KとはKEK to Kamioka(KEKから神岡まで)という意味です。
K(KEK)からK(Kamioka)までの距離は、実に250km。この前置検出器を通過してから、神岡町に届くまでに要する時間はなんと約0.001秒。(ちなみに東京駅から岐阜羽島駅まで新幹線(ひかり)で約2時間かかります)
この実験により、「ニュートリノに質量があることは、ほぼ間違いない」ということが分かっています。
講演
高田 耕治氏の講演
3人の先生方により、それぞれ宇宙、物質、生命についての講演会が行われました。高田耕治氏は、「加速器:高エネルギーへのたゆまざる挑戦」と題して加速器についての講演をされました。KEKの研究を支える"加速器"の歴史をひもとくと同時に、より高い電圧を作り出すための試みなどについての話を聞くことが出来ました。加速器を進化させることにより、更なる研究の発展につながります。高エネルギー加速技術の発展への熱い想いが感じることが出来ました。
中性子科学研究施設
中性子実験装置
タンパク質や磁性材料など、様々な物質内の原子配列や、原子の運動状態などを解明するために中性子を用いて測定をしています。(X線も物質の構造を探るために用いられますが、観測する原子によっては測定しずらいケースがあります)中性子が用いられる理由として、物質の構造を探るには中性子の波長やエネルギーが適していることや、透過性に優れていることなどが挙げられます。また、中性子は物質の磁気構造についても有益な情報を与えてくれます。
工作センター
アクリルをひょうたんの形に加工するまでにかかる時間はおよそ2分弱。このような加工技術もKEKの研究を支えています。
切断装置
加工装置
工作機で作製した
アクリル製ひょうたん
科学おもちゃ
超伝導体を磁気浮上させる"超伝導コースター"や凹凸のある通路をビー玉が落ちないで進む"ビー玉トランスポート"など子供向けの催し物も行われました。
※ビー玉トランスポート・・・加速器で用いられている原理の簡単な模式実験です。
ビー玉トランスポート
超伝導コースター
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